研究概要 |
今回のプロジェクトで下記の4項目を発展させた。 (1)ニホンザルY染色体の彩色プローブの作製:ニホンザルの染色体標本は、RPMI1640(含20%FCS,3mg/mlLPS,and 2mg/ml Con A)で白血球培養(5%CO_2,37℃)し、エタノール固定後、カバーグラスに作製した。染色体は、倒立顕微鏡上でマイクログラスナイフ(直径2μm)を用いて掻き取った。その断片は、0.5mlチューブ内の回収溶液(25mM EDTA,1mg/ml proteinase K,41%polyethylene glycol 6000)に回収した。PCR処理(2)後、FISH法を用いてその産物の質検定を行った。Y染色体から回収したDNA産物の内、14産物が染色体とハイブリダイズした(確立約50%)。その内の1個(MffY-2)だけがY染色体の短腕に対して完全な特異性を示した。MffY-2はX-Y対合の態様を解析する場合に有効であった。 (2)切断DNAのPCR増幅:顕微切断染色体断片は、回収溶液に保存し、タンパク除去後第1PCRをプライマーA(5′-GGAAA C AG CTATGACCTGAATTCNNNNNNATGTGG-3′)を用いて行い、引き続いて第2PCRをプライマーB(5′-GGAAACAGCTATGACCTGAATTC-3′)を用いて行った。ここで産物の検定を行い、陽性の物はプライマーBを用いてビチオン標識した。標識産物は、FISH法で由来部位の検定を行った。これで合格した産物が彩色プローブとして採用される。今回の試行において、回収溶液の有効性や1断片からDNA回収が可能等の進展が見られた。 (3)顕微切断法の癌染色体変異メカニズムへの応用:ヒト肺癌細胞やラット卵巣癌細胞に見られる、HSRやdouble minuteの由来メカニズムを解析するため、変異部位の切断を行い、プローブを作製した。この方法によって、従来不明であった癌染色体変異のメカニズムが、視覚的に明確化された。今後は、回収したDNA産物から癌関連遺伝子等を検索する。 (4)染色体進化の進学説の集大成:今井ら(1986)が提唱した染色体進化の新学説″最小作用説″の普遍性を高め集大成を行った。理論的にはすでに真憑性確認されており、今後はその実験的検証が持たれるところである。この理論は、霊長類の染色体進化にも重要な知見をもたらしつつある。
|