シリコンのナノメートル微結晶を用いた高輝度発光ダイオードの開発

1994 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06555002
• 研究機関: 筑波大学
• 研究代表者: 金光 義彦 筑波大学, 物理学系, 講師 (30185954)
• 研究分担者: 松本 貴裕 新日本製鉄(株), エレクトロニクス研究所, 研究員 ; 三村 秀典 (株)エイ, ティ・アール光電波通信研究所, 主任研究員
• キーワード: 発光ダイオード / ナノメートル微結晶 / ポーラスシリコン / シリコン / 表面 / 量子サイズ効果

研究概要

電気化学エッチングにより作製されたシリコン超微細構造であるポーラスシリコンの発光メカニズムを解明した。その基礎的な研究成果に基づいてナノメートル微結晶を用いた高効率の赤、緑、青色発光ダイオード素子を試作した。ナノメートル微結晶においては、構成原子数が少なくなることにより現れる「量子サイズ効果」と表面原子数が多くなることによる「表面効果」が絡み合って複雑な光学応答を示す。微結晶内部が関与した発光と微結晶表面が関与した発光とに実験的に分離し、高効率発光素子の設計指針を得た。特に、表面構造を正確に制御することにより、世界に先駆けて赤色から青色の発光を得ることに成功した。さらに、ポーラスシリコン/微結晶SiCヘテロpn接合ダイオードを試作し、発光効率を約10^<-3>%程度まで上昇させることができた。しかし、発光ダイオードとして実用化するためには約1%に発光効率を上げる必要がある。赤色以外の緑、青色の発光素子の開発の可能性も行ったが、その発光効率は非常に低かった。発光効率を向上させる目的で、溶液中で電荷注入層を作製することを検討した。溶液中で作製する電荷注入層とし、ポリメチルフェニルシラン等の有機物から研究を開始し、いろいろな色の発光素子・ダイオードを開発した。今後は、固体素子構造で発光効率の向上を計る必要がある。Si微結晶・ポーラスシリコンを用いた高輝度・マルチカラーデバイスの実用化の可能性が高いことを実験的に示した。さらに、光非線形性材料としてポーラスシリコンが優れていることを発見した。

研究成果

• [文献書誌] 金光義彦: "ポーラスシリコン" 分光研究. 43. 385-394 (1994)
• [文献書誌] 金光義彦: "光るシリコン" 日本物理学会誌. 49. 979-986 (1994)
• [文献書誌] 白石賢二: "シリコン低次元系の電子構造と光学応答" 応用物理. 63. 994-1002 (1994)
• [文献書誌] H.Mimura: "Blue Electroluminescence from Porous SiC" Applied Physics Letters. 65. 3350-3352 (1994)
• [文献書誌] Y.Kanemitsu: "Luminescence Properties of Nanometer-Sized Si Crystallites" Physical Review B. 49. 16845-16848 (1994)
• [文献書誌] H.Mimura: "Light-Emitting Diodes using Porous Silicon" Journal of the Physical Society of Japan. 63. 203-210 (1994)
• [文献書誌] Y.Kanemitsu: "Light Emission from Novel Silicon Materials" The Physical Society of Japan, 210 (1994)
• [文献書誌] Z.C.Zeng: "Porous Silicon" World Scientific, 465 (1994)