初年度は放射検出システムの開発と整備を主に行った。 1)大角度でチェレンコフ放射や遷移放射を集光できるミラーを備えた集光装置を新たに設計し、製作した。 2)チェレンコフ放射は短波長側で大きな強度を持つため、短波長領域に感度の高い紫外用分光器を購入し、この分光器に合わせて放射光を電子顕微鏡内から分光器まで真空中を導く光導管、およびフォトンカウンターを通してスペクトルを自動記録するシステムを製作した。このシステムは、電顕の走査機能を利用して光信号で像を作ることもできる。1)、2)の装置は、放射光検出システムとして購入した。 3)集光用のミラーに合わせて透過用及び反射用の1軸傾斜試料ホルダーを製作した。これを用いて、雲母およびシリコンの室温における実験を行った。 4)へき開により作製した雲母の薄膜試料では、端付近は厚さの一定したテラスに分かれており、各テラスからは異なるスペクトルが観測された。検出する光の波長を選んで像を作ると、これらのテラスの間にコントラストが観察された。 5)シリコンの薄膜試料では、端付近は厚さが連続的に変わるくさび状をしている。スペクトルには短波長にバンド間遷移によるピーク、長波長側に遷移放射の干渉による複数のピークが観測された。長波長側のピーク波長で放射像を作ると、電顕像で見られる等厚干渉縞に対応して縞コントラストが現れ、波長を変えるとその周期が変化することを見いだした。
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