平成7年度はこの研究の2年度目にあたり、初年度で製作を終えた放射光検出システムを使って物性研究への応用に主力を注いだ。測定されたスペクトルの補正やスペクトル間の演算などスペクトル解析を容易に行えるように、備品としてスペクトル解析システムを購入した。以下の物性について得られた結果ついて報告する。 1)銀薄膜からの遷移放射:銀は伝導電子のプラズマ振動の周波数に対応する波長が光学領域にある数少ない金属の一つで、薄膜ではその波長をもつ発光性の表面プラズモンモードが存在する。銀薄膜からの遷移放射スペクトルを測定し、このモードに対応する発光ピーク(プラズマ放射)を確認した。さらに、遷移放射が薄膜の結晶性や表面モルフォロジーに影響されること、下地結晶のある場合に放射像に特徴的なコントラストを生じることを見いだした。 2)シリコン下地結晶上の酸化シリコン薄膜からの放射を調べ、膜厚が100nm以下では遷移放射強度は膜厚とともに減少するが、100nm以上になるとチェレンコフ放射が大きくなり放射強度が増加することを見いだした。 3)ポーラスシリコンのカソードルミネッセンスには、フォトルミネッセンスに観測される赤色発光の他に、波長420nmに幅広いピークを持つ発光が観測された。断面試料を用いたCL像からこれらの発光には深さ方向の分布に違いがあることが示された。Ar雰囲気中でアニールした試料の赤外吸収スペクトルとCLスペクトルとから420nmの発光は表面に付着した水素を含むシリコン化合物によるものであることを明らかにした。
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