超伝導フォノン源を試料に接触せるために、低温での微小移動機構の開発を行った。低温では室温で使用できる様々な移動機構が使用できないために工夫が必要であるが、ここで用いた機構は慣性移動機構であり、ピエゾ素子の伸縮を利用してスライダーをガイドに沿って垂直に上昇・下降させるものである。従来この種の慣性移動機構では、ピエゾ素子の駆動波形として鋸歯状波や疑似サイクロイド波形が使用されているが、本研究では新たな試みとして、放物線を組み合わせた特殊な波形を使用している。この駆動ではピエゾ素子の伸びと縮みの加速度を独立に変化させることができるため、様々な加速度でのスライダーの移動距離を測定することによって、最適の駆動条件を見出すことができる。 測定に用いた移動機構のスライダーはアルミニウムの円柱、ガイドはパイレックスガラス管であり、両者は銀コーティングされたベアリングボールで接触している。理論的には、一定加速度でピエゾ素子を伸縮する場合には、加速度による駆動力と、スライダー・ガイド間の摩擦力との大小によって、スライダーの移動様式は4つの領域に分けられるが、今回測定を行った移動量と駆動加速度の関係も、この予想とほぼ一致した結果を与えることが明らかとなった。移動の最適条件はスライダー・ガイド間の摩擦力に依存しているが、摩擦力は材質やその表面状態・磨耗などに依存して変化するため、移動の最適条件を事前に評価することはなかなか困難である。
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