研究概要 |
本研究の目的は,レーザー光放射圧によって誘起される微粒子分散系の運動形態変化,特にレーザー伝播方向への微粒子並進運動(光放射圧誘起泳動現象)とそこからの動的散乱レーザー光の時間的統計特性について,散乱微粒子分散系の粒径・粒径分布・濃度との因果関係に注目して実験・理論および計算機シミュレーションによって詳細に解析することにより,その結果に基づいた新しい光泳動微粒子測定法を開発し確立することである。本年度は,本研究課題の内定時期の都合上,当初の計画で予定していた「計測システムの設計・試作,ならびにそれを用いた実験的解析」について,現在進行中で明らかな成果は未だ得られていない.しかしながら,かねてから現有の設備を用いて進めていた基礎実験と理論解析・計算機シミュレーションによって、以下に示す新たな知見が得られた。 1.レーザー放射圧下の微粒子分散系の運動は、個々の微粒子が照射ビームの横断面のどこに位置するかによって大きく異なる。したがって、そこからの散乱光強度ゆらぎの時間相関関数は、統計的に異なる運動を行っている個々の微粒子の存在を反映して、従来の単一負指数関数とは異なる形状を示す。この負指数関数からのずれ量も微粒子のサイズと照射レーザーパワーの増加に応じて増大するため、これを微粒子サイズを識別する指標として使用することができることが分かった。 放射圧によって誘起されるレーザー光伝播方向への微粒子の並進運動で,その泳動速度は光軸上を微粒子が移動するに従って変化し,照射レーザービームのスポットサイズと微粒子のサイズの比に依存してある位置で最大泳動速度を示すことがガウスビーム照明での光散乱理論とそのコンピュータによる数値解析,およびビデオシステムを用いた実像観測の実験から明らかになった.この結果は、粒子サイズとビームウェストでの泳動速度とが一対一対応しないMieサイズ粒子の場合においても、この最大速度位置を指標とすれば粒子サイズの識別が可能となることを示すものである。
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