研究概要 |
極限的な短パルスを発生させるためには、自己位相変調効果を用いた光パルス圧縮法が用いられる。しかし、従来の光パルス圧縮素子である石英ファイバーは、非線形屈折率が小さいことから、そのパルス圧縮効率は低く、増幅をともなった高出力のレーザーパルスを必要とする。これには、高度の調整を必要とする大きな増幅システムが不可欠となり、パルスの強度不安定化、繰り返し周波数の激減、ファイバーの光損傷といった欠点を招くことになる。これらの欠点を克服するため、われわれは、非線形の大きな有機材料を用いた光パルス圧縮用ファイバーを提案している。 本年度は以下の(1)新しい短パルス化法の理論的提案、(2)フェムト秒(fa)域での3次非線形光学材料の評価、(3)新しい光パルス圧縮素子としての新非線形シングルモードファイバーの評価を行った。 ・(1).同期された3つのfaパルス(ω_<01>,3ω_<01>/2,2ω_<01>)のファイバー中での相互誘起位相変調法による超広帯域コヒーレントパルス発生とそのモノサイクル化を提案し、非線形伝播方程式を解くことによってこのことが理論的・現実的に可能であることを示した。 ・(2).PbO,TeO_2,BiO_2など重イオンがドープされた高屈折率ガラスの3次非線形感受率x^<(3)>とそのフェムト秒応答特性を、80fs,625nmでの縮退4光波混合法により調べ、それらのx^<(3)>が石英の50倍で、瞬時に応答(80fsパルス幅内で)することを確認した。 ・(3).GeO_2ドープSiO_2シングルモードファイバー、ErドープGeO_2・SiO_2シングルモードファイバーの非線形屈折率n_2のフェムト秒応答特性を、80fs,625nm,数100kWパルスの自己位相変調法により調べ、それぞれ石英のn_2の2.2倍、3.6倍、n_2応答時間は1.8fs、2.1fsと初めて測定した。
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