研究概要 |
有限利得帯域幅を有するレーザーから発生できる最短パルス幅は、その帯域幅の逆数程度(半導体レーザーでは〜100fs)以下には狭くならない。本研究の目的は、(1)これ以下の短パルス化に必要な光パルス圧縮用高非線形導波素子を開発することである。さらに(2)現時点での世界最短パルスをブレークスルーする光パルスモノサイクル化手法を探索することも目的としている。以下に研究成果を列挙する。 (1)GeO_2ドープシリカガラスシングルモードファイバーおよびEr:GeO_2ドープシリカガラスシングルモードファイバーのフェムト秒光パルス非線形伝搬実験を行い、それらの非線形屈折率n_2およびその応答時間T_Rがそれぞれn_2=2.4×n_<2,sio>2(石英ファイバーのn_2),T_R=1.8fsとn_2=3.6×n_<2,sio>2,T_R=2.1fsであることが明らかとなった。 (2)ヘテロダイン検出方式高感度時間分解干渉法により、高PbOドープシリカガラスシングルモードファイバーのフェムト秒域での非線形屈折率n_2が9.2×n_<2,sio>2であることが明らかとなった。 (3)30fsの非線形屈折率応答時間を有するDAN有機結晶シングルモードファイバーの、有限応答性によるパルス圧縮効率の低下は、非線形チャープを3次位相分散まで補償することによって防げることが明かとなった。 (4)フェムト秒時間分解干渉法により、CS_2とその希釈液における2成分の非線形屈折率変化(n_2//(t)とn_<2⊥>(t))を高精度に測定し、それらの物理的起因を明らかにした。 (5)正常群速度分散波長域でn_<2⊥>(t)の分子運動成分が負の特性を示すことを利用したCS_2キャピラリーファイバーによるソリトンパルス圧縮の定量提案を行った。 (6)キャリア波の位相が同期された2つあるいは3つのフェムト秒パルスの短ファイバー中での相互誘起位相変調を利用することにより、近赤外から近紫外に渡る超広帯域コヒーレントパルス発生が可能であることおよびこのパルスを空間位相変調器により非線形チャープ補償すると2.70fsの準モノサイクル(1.43サイクル)パルス発生が可能であることが明かとなった。
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