本研究の目的は、光ビームのスイッチやチョップ、方向の切り替え、走査などを行なう超小型の光機械(オプトメカニカル)素子を、水晶基板のマイクロマシ-ニング加工で実現することである。本研究では水晶の持つ性質(透明、マイクロマシ-ニングとの適合性、圧電性)に着目し、プリズムやミラーとそれを圧電的に動かすアクチュエータを一体化した超小型オプトメカニカル素子を製作する。製作には、フォトリソグラフィーやエッチングなどの半導体技術を活用し、寸法精度1μm程度で高さが100μm程度の立体構造を、基板上に多数作ることを可能にする。具体的には、マイクロミラーの角度を水晶のアクチュエータで変え、光ビームの方向を切り替えるデバイスや、トーションバーで支えたマイクロミラーを圧電駆動してねじれ共振を起こし、光ビームの走査をするデバイスを開発する。 平成6年度の研究計画に添って、水晶のマイクロマシ-ニングで作るマイクロアクチュエータの設計と試作を行なっている。研究の進展状況は極めて良好で、現在までに次のような知見を得ている。 1.水晶基板を異方性エッチングで加工して、長さ2mm、幅20μm高さ100μmの極めて細く長い梁を作り、更にその上に駆動用の電極をセルフアライメント法で付加するプロセスを開発した。 2.上記のプロセスを用いて、共振点で100μm程度の振動変位を得るアクチュエータ、また50〜100μm程度の静的な変位を得るアクチュエータ等を作った。特に後者は、ある共振モードにおいて非線形バネの効果により、交流で励起しているにもかかわらず静的な変位が得られる特異な現象であり、理論的解析も進めている。
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