研究概要 |
本研究は,閉じたき裂の寸法を正確に非破壊評価し,重ねて閉じ具合の非破壊計測をも可能にする超音波探傷手法の開発を目的とした試験研究である。本年度は,以下の項目に関する研究を行った。 1.斜角深傷に基づくき裂端の超音波応答による閉口き裂の非破壊定量評価 本研究者らは,昨年度までにき裂の超音波応答において,試験片に垂直に超音波を入射した垂直深傷に比べて,超音波の入射と受信を一つの探触子で行う1探触子を用いて超音波を斜めに入射する斜角探傷の方が検出感度が良好であることを見い出してた。これらの結果を踏まえて,本年度は,斜角探傷における超音波の入射角とき裂深さに係わるエコー音圧の関係を明らかにして,斜角探傷によるき裂の深さの非破壊定量評価およびき裂の閉じ具合の非破壊計測が可能であることを明示した。 微小閉口き裂の斜角探傷による非破壊評価 1探触子による斜角探傷は垂直探傷に比べて,閉口き裂の計測感度が向上することを踏まえて,機器・構造物の健全性評価に必要不可欠な微小き裂の斜角探傷による非破壊評価手法を検討した。微小き裂を模擬するために幅35mm,長さ230mm,厚さ30mmのAISI304ステンレス鋼製試験片に,放電加工により幅0.1mm,深さ1mmと3mmの2種類のスリットを導入した。この模擬微小き裂に対して直径6.4mm,周波数5MHzの探触子を用いて,斜角探傷により超音波の応答を解析した結果,き裂の深さと超音波の反射および屈折の間に相関関係があり,本手法により微小閉口き裂の非破壊評価が可能であることが判明した。
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