研究概要 |
本研究ではこれまで事故時の各種衝突条件,即ち衝突角度や衝突相対速度などについて比較的簡単パラメータ解析が行える.複数車の斜衝突時の人体-車体連成系の衝突応答解析システムを構築した.その際車体は骨部材から成る多質点系でモデル化し,車体損傷時のエネルギー吸収特性は,これと等価なクラッシュ部材を相互の車体周辺に配置させて取扱い簡便化を計っている.また自体多関節系の動力学モデルについては,関節部に6自由度のバネ・ダンパ系を有する全体モデルを用い,特に重要な関節内部構造については,これとは別に,生体力学の筋骨格系解析モデルと解析システムを構築して,上記連成解析の結果得られる各関節部作用力や質点加速度の時刻歴をこれに与えて内部構造の各部筋肉の筋力予測が行えるシステムを構築した.解析システムの妥当性を評価するため,試験台車に,試作ドール(簡易内部構造付)を装着した斜衝突実験を各種の基本的条件で実施してシステムの有効性を検証している.これらの成果に基づいて今年度は以下に述べる一連の研究を実施し次の事を明らかにした. (1)自動車の車体サスペンション系,ステアリング系,アクセル・ブレーキ系,タイヤ系からなる3質点24自由度のマス・バネ系の動力学モデルの運動方程式をラグランジュ法により求めた. (2)これにブレーキ系,アクセル系およびハンドリング系など各種の操作系の動力学モデリングを行い,これらを組み合わせる事により自動車のドライビングや,衝突により生じる運動および動的応答特性が解析できるコンピュータ・シミュレーションシステムを構築した. (3)アクセル・ブレーキやハンドルの各種の操作により生じる自動車のドライビング・シミュレーションを行ってその有効性を明らかにした. (4)ブレーキ・アクセルとハンドルの連成操作や,自動車が,対抗車に衝突する場合の応答特性を解析できるようにした. (5)代表的な自動車教習所のテストコースの走行シミュレーションを行って,軌道計画と各種の操縦条件を与えて自動車のドライビング・シミュレーションを行い,その有効性を明らかにした.
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