本研究ではレーザ照射によって微粒子の運動を非接触で制御し超精密微細加工を実現させることが目的である.初年度は、微粒子操作装置の作製に重点を置き研究を遂行した。レーザを透過する微粒子表面では光線が屈折する際、光放射圧が発生する。この光の力で微粒子を非接触の状態で運動制御可能である。光で微粒子を捕らえ、加工に利用するには光による発生力が大きいことが望まれる。そこで、高出力YAGレーザ発振器とレーザによる損傷を避けて集光できる光学顕微鏡が必要である。YAGレーザ装置は連続発振TEM_<oo>18Wのものを選定した。一方、顕微鏡は内部ミラーに特殊コーティングを施すなどし使用可能なものに改造した。また、顕微鏡外部の光学系には2次元の自由な走査パターンを創成するためのビーム走査装置を作成、取付けた。 次年度は、まずレーザ照射時に生じる諸現象を詳細に調査した。水中ではダイヤモンド、シリカ等多くの微粒子が光放射圧で自在に操作できることが分かった。また、レーザを高速に走査することで、同時に複数粒子を配列できることも確認した。一方、表面張力の調整次第ではレーザを照射した際、局所的に界面自然対流を発生させることが可能であった。この対流を利用して微粒子を自転、公転運動、直線運動させることが可能であった。光放射圧では微粒子を数十rpmで回転できたが、対流を利用した操作法では光放射圧よりはるかに大きい数千rpmで回転運動させ得ることが分かった。直線運動に関しても巨大粒子や不透明粒子の運動制御が容易であった。 大気中では基板上の微粒子を捕捉した際、浮上現象を発見した。この浮上特性を調査した結果、基板形状に従って操作されることや基板材質の変化で浮上量が変化するなど興味深い事実が明らかになった。これら基礎実験から得られた知見は加工に留まらず、将来マイクロメカニズム、計測、分析への応用が可能な貴重ものである。 本実験では、微細加工として光放射圧で操作した微粒子の3次元構造物の組立てを行った。さらに超微粒子混濁液中にレーザ光を吸収する微粉を混ぜ、照射時に超微粒子を固化し3次元物体を構築できた。
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