研究概要 |
本研究は,機械の摩擦摺動面の潤滑状態及び表面損傷を,油中の摩耗粉を用いて診断するシステムを開発することを目的とし,今年度は主に測定装置の改良及びポ-タブルシステムの試作,形態評価法の改良,摩耗粉形態と摺動面性状及び摩擦状態との関係付け,ならびに手法の実地データへの適用を行った. 前年度に引き続き,ピン/ディスク型摩擦試験機による各種潤滑油を用いた滑り接触試験を行うとともに,実地データとしてFZG歯車試験機による疲労試験及び焼付き試験,油圧機器作動油中の摩耗粉を採取した. 形態解析では,従来の基礎形態パラメータに加え,フーリエ記述子とテクスチャパラメータを導入した.フーリエ記述子はディジタル画像の量子化誤差を受けにくく,摩耗粉の特徴識別のために有利であることを明らかにした.摩耗粉形態と摩耗粉表面及び摺動面の表面テクスチャとの対応関係を調べ,摩耗粉の特徴から生成場所の特徴が検出できることがわかった.また摩耗粉の形態とその発生時の摩擦係数との相互関係をピン/ディスク試験について調べ,形態パラメータから摩擦係数を推定することが可能なことを示した.この関係は階層型ニューラルネットワークによって表現でき,また相互結合型ニューラルネットワークによる記述も試みた. 顕微鏡画像解析装置において自動ステージ及び駆動ソフトウエアを開発し,上述の形態測定の無人化を実現した.本装置とグラフィックワークステーションにより,摩耗粉の立体形状測定のソフトウエアを開発した. 歯車試験では,疲労損傷及び焼付きに至る過程が,摩耗粉の特徴の変化から検出できた. 以上より,本研究で開発した摩耗粉の特徴解析方法,及びその摺動状態との相互関係のニューラルネットワークによる整理方法は,実機の状態診断に適用可能であり,実用化へ向けてさらに研究を進める予定である.
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