本研究はフラクタル次元を利用して、人工物と自然物の画像を分離しようとする研究である。フラクタル次元は自然物では非整数値を取り、人工物では整数値をとる例が多い。本研究では対象画像に対して、格子状に細分化した部分ごとにフラクタル次元を測定するボックスカウンティング法を基礎にフラクタル次元を測定し、それを基礎に画像を弁別する。 本方法は例えばコンクリート中の割れの検出、あるいは季節によって変化する木々の中の道を検出する等に役立つ。すなわち、これまでの画像処理においては対象が明確ではないと、その処理方法も決定できない短所があったが、本方法では対象についてまったく事前の知識を必要とせずに、おおまかに人工物と自然物を弁別できる点が最大の特徴であり、非破壊検査における目視検査に相当する作業や、ロボットのビジョンシステムにおけるプリプロセッサとして大いに期待される。 本年度実績としては、 (1)基本的な方法論の有効性を確認した。 (2)フラクタル次元は産出方法によって変化するので、どの方法が適当か検討を行なった。これまでのところボックスカウンティング法が簡単で、しかも信頼性がおけるとの結論を得ている。 (3)ボックスカウンティング法により算出されるフラクタル次元が、条件によりどのように変化するかをより詳細に検討し、適切な算出方法を開発した。 (4)画像の種類と、入力機器による影響を検討した。 (5)ICチップ化するために、その基本的な手順と必要な条件をハードウェアの観点から検討した。
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