研究概要 |
壁面冷却によって生ずる非一様でかつ比較的小さな過冷却を利用して,組織・組成の分布に傾斜性のある複合合金の開発を目的とする.具体的には,結晶のmorphology(1次・高次アームのスペース間隔,数密度など)を中心に,繊維組織とマトリックスからなる複合合金の材料設計,およびそのための過冷却場での結晶の自由成長,それに続く壁面冷却支配のもとでのマトリックスの形成など,凝固におけるミクロ性を組み込んだミクロ伝熱を確立する. 今年度は,Pb-Sn系ならびにBi-Sn系合金を供試した凝固実験を行い,過冷却が崩壊して伝熱支配へと移行する凝固の過程や,各過程におけるセルラ-やデンドライトの結晶のmorphologyなどを金属固有の問題として捉え,以下の成果を得た. 1.非一様過冷却場での結晶の自由成長が,一様場における過冷却度と濃度をパラメータとしたLKTモデルの拡張によって記述された. 2.過冷却場での結晶は高次アームを伴わないセルラ-組織となり,それに続いてデンドライト晶が形成される.前者は結晶間隔の熱力学的不安定場が容易に崩壊しないため,また後者は固・液界面前方に組成的過冷が出現したことによると考えられる. 3.凝固層の組成とともに組成の分布が求められ,その出現の動特性が状態図上で説明された. 凝固組織の形成に対して,結晶成長理論,温度・濃度共存場の緩和理論などを展開し,ミクロ組織とマクロ伝熱を連成した速度論を確立するためのモデルが提示された.
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