研究概要 |
救急搬送時に患者の様態が悪化して,病院に到着したときには既に心肺停止の状態にあるということが問題となっている.その原因の一つとして,救急車の加減速時に発生する加速度によって血圧が変動し,患者の生体に悪影響を及ぼしていることが考えられる.このことは,特に循環器系に障害を有する患者にとって大変危険である.しかし,このような血圧変動を抑制するための救急車用防振ベッドに関する研究は行われていない. そこで本研究は,加減速時に患者の頭足方向に作用する加速度を相殺する救急車用アクティブ制御方式ベッドの構造を提案する.また,シミュレーションと実験によって血圧変動抑制の効果を確認する. 平成6年度では,救急搬送中に現れる患者の血圧変動を抑制する方法として,救急車が加減速を行ったときにベッドの傾斜角を変化させ,重力加速度によって患者の頭足方向に作用する加速度を相殺する方法を提案した.また,提案した方法を確認するための予備実験として,ベッドの傾斜角度を手動スイッチによって変えることのできるマニュアル制御方式ベッドを使用し,急ブレーキ時にベッドを傾斜させる実験を行った.その結果,ベッド傾斜によって頭足方向の加速度が相殺され,被験者の血圧変動が抑制されることを確認した.さらに,ベッドの傾斜角を目標角に追従して変化させることのできるアクティブ制御方式ベッドの構造を提案し,本研究で申請したパーソナルコンピュータを用いてその効果を検証した.この結果,アクティブ制御方式ベッドを使用することによって血圧変動を約80%抑制し,患者を安全に搬送することが可能であると考えられる.
|