研究概要 |
1.遷移金属窒化物の表面分析 AES (Auger Electron Microscopy)を用い、NbN,Nb_2N,TiN,ZrNのフラッシング温度による表面組成の変化を分析した。表面分析の結果より、試料表面には金属元素と窒素の他に、炭素や酸素等の元素が存在することが確認された。表面での元素の濃度は、試料とフラッシング温度によって変化し、一般に金属元素の割合はフラッシング温度の上昇とともに上昇し、他の元素は減少した。窒化物の主成分である窒素の減少が見られる温度は窒化物の種類により一定だった。この窒素の減少は高温で窒化物の蒸気圧が高いため、窒素が分解蒸発したためと考えられる。 2.表面に存在する元素と電界放射特性との相関 遷移金属窒化物の電界放射特性と表面分析の結果の比較から、電界放射特性の変化が起こる温度は、窒化物表面の窒素が分解蒸発する温度と一致することを示した。放射電流の変動は、窒化ニオブ陰極では窒素の減少と相関が見られたのに対し、窒化チタン陰極では窒素との相関が見られなかった。このことから遷移金属窒化物の電流変動は窒化物表面の窒素の量ばかりではなく、他の要因にも依存していると考えられる。また、試料を高温で加熱することは表面の窒素を分解蒸発させ、放射特性に悪影響を与えるので、電界放射陰極への応用に際しては加熱温度に制限を設ける必要があると考えられる。 3.遷移金属窒化物の仕事関数の測定 AESの測定系を利用して遷移金属窒化物の仕事関数の測定を試みた。予備的な実験の結果から、窒化物の仕事関数は表面に存在する元素の量の変化によって変化することが示された。今後は仕事関数の絶対値の決定、表面元素と仕事関数の相関についてより詳しく調査を行う予定である。
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