研究課題/領域番号 |
06555088
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
荒井 賢一 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (40006268)
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研究分担者 |
加藤 義徳 (株)アルプス電気中央研究所, 第一研究室長(研究職
大槻 悦夫 (株)トーキン材料開発部, 部長(研究職)
び 暁ふぁん 東北大学, 電気通信研究所, 助手 (10261570)
石山 和志 東北大学, 電気通信研究所, 助手 (20203036)
山口 正洋 東北大学, 電気通信研究所, 助教授 (10174632)
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キーワード | 3%シリコン鉄磁性合金薄帯 / 細溝 / 磁区細分化 / 渦電流損失 / 鉄損 / プラズマエッチング / 走査型電子顕微鏡 / 磁壁枚数 |
研究概要 |
発電所から需要家までの送配電系統中で失われる電力損失のうち、特に変圧器で失われる電力損失は国内だけで年間約150億kWhに上る。この損失の低減化は変圧器鉄心として使用される方向性珪素鋼板の高品質化により実現できる。本研究はこの方向性珪素鋼板の低損失化を目的としたものである。 近年次世代の方向性珪素鋼板として研究対象となっている板厚100μm以下の薄方向性珪素鋼板は、その広い磁区幅に起因して生じる大きな渦電流損失が低損失化の大きな壁となっている。本研究は、薄方向性珪素鋼板の低損失化を目的として、表面に溝を形成することによる磁区細分化効果の検討、磁区の動的観察および磁区挙動と渦電流損失との関係、ならびに磁区細分化処理を施した試料の損失評価を行った。その結果、溝形成に伴い表面での静磁エネルギーの増加により磁区は細分化することを明らかにし、磁区細分化効果に対する最適溝形状が明らかとなった。さらに磁区の動的挙動から各磁壁の速度を考慮して算出した渦電流損失は実測値とよく一致し、磁区の渦電流損失発生機構に関する重要な知見が得られた。さらに板厚32μmの薄方向性珪素鋼板に最適形状の溝を形成した場合、その損失値は、励磁周波数50Hz、励磁磁束密度1.7Tにおいて0.21W/kgと、驚異的に小さい値であった。これは現在市販されている最高品質の方向性珪素鋼板の損失の約1/5である。 以上のように本研究では変圧器による電力損失を低減する新材料の開発に成功するとともに、磁区構造制御機構ならびに磁区挙動と損失発生機構に関する重要な知見が得られた。これらの知見は低損失変圧器開発ひいては地球環境のために重要であるのみならず、磁気工学の立場からも極めて重要である。
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