研究概要 |
本研究の目的は、太陽電池用ZnO透明導電膜の開発である.本年度は,ジエチル亜鉛と水とを用いた有機金属気相成長(MOCVD)法にけるZnO膜の成長機構の解明,表明形状の制御及び耐熱性の向上に着目し,研究を行った.その結果,以下に示す成果が得られた. 1.基板温度120℃以上において,c軸が基板に平行になった,凹凸形状を有する高透過率なZnO膜が得られた.さらに,成長速度の温度依存性,および成長温度に対する膜の配向性を詳細に調べた結果,ジエチル亜鉛と水との化学反応により生じたZn(OH)_2が膜形成種となりZnO膜が生成することが明かとなった.このZn(OH)_2の分解温度が120℃であることから,この膜形成種の基板表面での分解が膜の配向性を決めていることが新たに見いだされた。 2.酸化剤として,D_2Oを用いることにより,凹凸形状を有するZnOが得られる温度が140℃以上となった.これは,膜形成種がZn(OD)_2に変化したためと考えられる.そこで,基板温度130℃においてD_2OとH_2Oの混合酸化剤を用いることにより,ZnOの表面形状を凹凸から平坦まで制御することに成功した. 3.初めに低温度で凹凸形状を有するZnO膜を製膜し、次に高温度でZnO膜を作製する2段階成長法を行った.その結果,膜の凹凸構造を維持したまま耐熱性に優れたZnO膜が製膜可能であることが明らかとなった. 以上より,太陽電池用透明導電膜として,高透過率・テクスチャー構造を有するZnO膜を作製するための基礎的技術が確立された.
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