研究概要 |
昨年度試作したPECVD装置のうち、酸素導入系ならびにCF_4ガス導入系の2系統の流量制御装置を,マスフローコントローラにして、制御性・操作性を高めた.なお,保守管理を容易にするため,購入するのは窒素ガス構成機種に統一して,実際使用するガスで再校正することとした.また,スキャナ付きデジタルマルチメータを購入して,測定の能率を向上させる処置を施した. 本年度はAl積層配線構造の電気的特性を評価する計画で研究を開始した.実際に積層構造を製作するには,下層配線側壁にも均一な成膜,あるいはフロー形状堆積を実現しなければならない.PECVD装置のガス導入部・電極間隔の変更ならびに,CF_4ガス添加により段差被覆性の改善を試みたが,大きなを成果を得ることはできなかった.そこで,TICSを多分子層吸着させて堆積する(本研究申請者が提案.第43回応用物理学関係連合講演会発表予定:講演番号29aN3)ことを考え,低温堆積(約100℃)を試みた.堆積温度を下げるにつれて多孔質な膜が堆積し,堆積温度100℃で含有水分量10wt%のSio_2膜となってしまったが,酸素分圧比を95%に高めることにより,含有水分量1.6wt%まで改善することができた.同堆積膜でMOSダイオードを製作し電気特性を評価したところ,抵抗率は9x10^<14>Ωcmであった.C-V特性は,ヒステリシスが大きく,特性曲線全体が正側に大きくシフトしていたが,300℃のアニール処理を施すことにより,ヒステリシス幅,フラットバンド電圧ともに著しく改善することができた.アニール処理後の局在順位密度,固定電荷密度はそれぞれ8x10^<10>cm^<-2>eV^<-1>, 2x10^<11>cm^2であった.以上より堆積温度100℃でも充分な電気特性の膜が堆積できることを実験的に示した.今後はTICS多分子層吸着する領域で均一堆積・フロー形状堆積を発現させる研究を続け,Al多層配線構造実現を目指す.
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