ナノ積層薄膜の電子密度分布精密測定装置として、結晶モノクロメータ、アナライザー付きX線反射率測定装置を設計、製作した。モノクロメータに非対称チャンネル・カット結晶を採用し、ビーム強度を1桁高めた。データ解析用ソフトウェアとして歪み波ボルンX線散乱理論を用いる計算機コードを開発し、低/高錯乱角全域にわたって鏡面反射、非鏡面散漫散乱データを解析し、多層膜界面のラフネス、その面内および面間の構造相関を決定することを可能にした。以上の装置系を用いて、半導体人工超格子(SiGe/Si)、金属磁性体(Gd、GdCo)、Al/Cなどのナノ積層薄膜の膜厚とその乱れ、界面ラフネスの構造を解析した。SiGe/Si系については僅かに(III)面と傾いた表面をもつSi基板にGe混晶比10%および30%のSiGeをSiと交互に10層成長させた人工超格子において、基板表面の周期的原子ステップが積層膜の界面に転写される様子を詳細に解析し、Geの組成比によって転写率が著しく異なることを明らかにした。磁性体薄膜に関しては、界面の磁気構造をシンクロトロンX線の共鳴錯乱によって研究する基礎となる構造評価を行なった。Al/Cについては異常分散効果を利用して電子密度の膜厚方向の分布モデルを使用せず、X線鏡面反射データから直接決定する試みを行なった。
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