平成7年度4月〜7月まで、前年度試作した階段形特性MOSFETの種々の特性を測定し、検討評価した結果を論文にまとめてJJAP応用物理学会・欧文誌に7月19日に投稿した。投稿論文は8月21日に掲載許可となり、校正を経て10月号に掲載された。(研究業績(1)) 研究業績(1)ではa)n‐チャネルで階段形特性MOSFETを製作し、p‐チャネルの階段形特性MOSFETと同様な特性を得た。b)p形基板にマイナスのバイアス電圧をかけることがn‐チャネルの素子の階段形特性を安定化するのに非常に有効であること等を明確にした。 これらの階段形特性MOSFETの特性解析と平行して、この素子の応用の検討を行った。この素子は電流の流れ始める電圧が幾何学的寸法によって設定されるという特性に特徴があり、生体の感覚器官の受容器の如くしきい値で大きさを弁別する回路に適している。そこで、ソフトウェアを用いないイベント・トリガ・シーケンス制御回路群で信号が回路を伝播する際に認識の処理がなされるという生体類似の情報処理をするVLSIの開発を目標にし、次のように『音声認識装置』の検討を進めた。『音声波形のパルス化回路』を市販部品によって試作し、この装置を用いて音声の認識実験をした。その結果を踏まえて、新しい実時間音声認識システムを考案して東北大学電気通信研究所の第281回音響工学研究会で報告した。研究業績2はこのシステムで必要とされる『パルス幅弁別MOS回路』に関するものである。 以上、本研究によって階段形特性MOSFETの基本的な特性の信頼性が確立し、実用化の基礎が確立された。
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