研究概要 |
コンピュータトモグラフィ(CT)は最初に実現されて以来20年以上経過し、より高度の機能をもつCTの実現が期待されている。本研究では新世代のCTとして3次元単色X線CT装置を実現すべく,その基礎となる考察を行う。まず、被写体のすべての3次元情報を収集することができるX線源の走査軌道について検討した。その結果,装置としての実現性から円と直線からなる軌道が最も適切であると判断した。3次元CT画像再構成については,ランドの反転公式からアルゴリズムとして実装できる一般的な再構成法を導出した。また提案する円と直線からなる走査軌道に対しては大幅に簡略化され,高速の再構成アルゴリズムが実現できることで明らかにした。これらは数値ファントムを用いた計算機シミュレーションによってその有効性の実用性が確認された。 これらの理論的考察に基づき,3次元CT装置を模擬した実験システムを製作した。X線源はシンクロトロン放射光から蛍光X線法によって発生させる単色X線を用いる。このX線源は均一の強度でビーム角の大きい円錐ビームを発生することが確認されており,本実験システムには極めて適切なものである。被写体は計算機制御された定盤の上にマウントされ、プログラミングによってX線源の走査軌道が実現される。2次元投影データはイメージインテンシファイアで検出され,ディジタル化されてワークステーションに入力されて、開発された再構成アルゴリズムによって被写体の3次元CT画像が再構成される。単色X線源を用いるためビーム硬化現象は無視でき,CT値は各組織のX線吸収係数を正確に反映した定量的データが取得できる可能性がある。また,エネルギー差分法を用いることにより特定元素の3次元空間分布を得ることも可能となる。今後はこれらを実験によって確認し,新世代のCTの実現を目指す。
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