研究概要 |
本研究は新世代のCTとして3次元単色X線CT装置の実現を図るための基礎となる研究を行ったものである。まず,被写体のすべての3次元情報を収集することができるX線源の走査軌道について検討し、最も実用的なものは円と直線からなる軌道であると判断した。3次元CT画像再構成に関しては、ラドンの反転公式から一般的な再構成法を導出すると共に提案する走査軌道に適用できる効率的な再構成アルゴリズムを求めた。これらは数値ファントムを用いた計算機シミュレーションによってその有効性・実用性を確認した。 これらの基礎研究に基づき,3次元CT装置を模擬した実験システムを試作した。X線源はシンクロトロン放射光から蛍光X線法によって発生させる円錐ビームの単色X線で,そのエネルギーはターゲットを変えることで可変にできる。ビームは広角で均一な強度をもつことが確認され、実験システムに組込まれた。被写体は計算機制御された定盤にマウントされ、プログラミングによってX線源の走査軌道が実現される。イメージインテンシファイアによって測定された投影データから開発された画像再構成アルゴリズムにより被写体の3次元CT像が再構成される。被写体として7層の円盤を積み重ねたファントムと心臓ファントムが用いられ、いずれも完全な3次元像が再構成できることを認めた。さらに特定元素(例えば造影剤など)の斤一吸収端の直前、直後のエネルギーをもつ線源で得られた像の差分をとるエネルギー差分法により、特定元素の3次元空間分布像を得ることが可能となった。再構成像は可視化ソフトウエアによって表示され、被写体の3次元構造が視覚的にも明確に確認できる。これらの研究成果から、3次元イメージングシステムとしての基本性能が理論的・実験的に明らかとなり、新しい機能をもつ3次元CTの実現可能性について有益な知見を得ることができた。
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