研究課題
試験研究(B)
本研究では、チャンネル光導波路上に生じるエバネッセント場の散乱によって生じる光の放射圧を、マイクロマシンの動力源として用いるための研究を行った。1)可動子に生じる放射圧の解析及び可動子の設計:環境要素法、拡張Mie散乱理論に基づいた放射圧の計算方法を確立し、光のエネルギーを効率よくマイクロマシンの運動エネルギーに変換するための可動子の形状、屈折率の設計を行った。この結果、可動子の比屈折率を比較的高く(1.5程度)すれば、特定の形状、サイズで起こる光の共鳴状態を実現することによって、小さな入射光強度でも、効率的に放射圧を発生させることが可能であることがわかった。2)紫外線硬化樹脂を用いた可動子の製作:設計した可動子を製作するために、2光子吸収過程を利用した3次元マイクロ光造形法を開発した。この手法では、近赤外レーザーを、紫外線樹脂中に集光し、集光点の樹脂を硬化させ、その集光スポットを3次元走査することにより、任意の3次元構造体を形成できる。現在、1μmの加工分解能で、3次元の微細構造を持った構造物を作製することに成功している。3)可動子駆動の実験結果:テスト用の可動子を用い、チャンネル導波路上に形成されるエバネッセント場によって可動子を駆動させる実験を行った。可動子には、誘電体、金属の微粒子を用いた。光源には、Nd:YLFレーザー(λ=1047nm)を用いた。実験の結果、μmオーダーのサイズの可動子を導波路の経路上に捕捉したまま、連続に安定して駆動できることを確認した。このときの可動子の移動速度は、十数μm毎秒で、1cm以上の距離を駆動させることができた。