本研究は、コンクリート構造物のひび割れの検査技術の開発とともに、ひび割れの検査と補償とを同時に行う技術の開発を目的として行ったものである。その結果、以下のようなことが分かった。 1.ひび割れの検出について 断面が250×200mm、長さ500mm、D16異形鉄筋1本を持つ、鉄筋コンクリート供試体を作成し、3点曲げ載荷により最大幅0.2mm程度のひび割れを発生させ、そのひび割れ中に造影剤を注入し、X線造影撮影を行った。その結果、実験室段階においてはコンクリート厚は25cm程度のもの、ひび割れ発生面のひび割れ幅が0.2mm以上のものであれば、ひび割れの発生状況およびひび割れ先端位置の検出は可能であることが分かった。 2.ひび割れの検査と補修とを同時に行う技術について コンクリート構造物に発生したひび割れの検査と同時に補修を行うため、造影性能を持った補修剤の開発が必要となった。エポキシ系接着剤にX線造影剤を高速攪拌で混入することにより、接着効果を劣化させることなしに造影効果をもつ造影補修剤の開発ができた。確認試験として、この造影補修剤をひび割れに充填し、造影効果と補修効果の確認試験を行ったが、造影補修剤を注入したほとんどのひび割れから、ひび割れが発生せず、接着が十分であることが確かめられた。 3.現場を想定した大型供試体に発生したひび割れの検出について 断面が860×300×1500mmの床版を想定した大型供試体の下面に非貫通のひび割れを発生させ、現場を想定して下から造影剤の注入を行い、造影剤が上部のひび割れ先端まで充填させるかどうかを確認した。その結果、下方からの注入方法では、ひび割れ先端まで造影剤は十分に充填されないことが分かった。
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