研究課題
1985年1月17日未明に起きた兵庫県南部地震は阪神大震災と呼ばれる甚大な被害をもたらした。これにより、これまでの土木、建築構造物の耐震設計に対する根本的な見直しを迫られているが、地震予知についても新しい観点からの見直しが必要と思われる。平成6年度において地殻変動解析を行い、列島規模で見た場合、中央構造線-花折・金剛断層-北米プレート日本海側境界はサンアンドレアス断層に類似した右横ずれ断層の動きが見られることを指摘した。平成7年度において引き続きて解析を行い次の結果を得ている。地震はせん断によって生ずるとして現在の流れの中で、基本的には引っ張り破壊が起因して地殻の変形が進展するとした本解析は、現在指摘されている危険地震断層をよく表現している。こうした解析は突き詰めてゆくと、熱、流体、応力の連成解析であり、地球を丸ごと解析するところに落ちつきそうである。今回の解析に対して述べれば次のようにまとめられる。(1)今の解析では地震の再来性を表現できず、このためには下部地殻に粘性項を含めた解析を行う必要がある。(2)現在の2次元解析は平面応力状態として同じ地殻厚さを想定しているが、実際の地殻の厚さを想定して解析する必要がある。また現在、主としてA級の活断層をメッシュ分割に反映させているが、せん断ごうせいを高めてB級、C級の活断層にも適用する必要がある。また中小規模の割れ目は構成則に反映させた解析をすることが必要である。(3)ブロックローテーションが大きくなるので有限変形を考慮した解析が必要である。(4)中央構造線の四国西端部の断層応力場が中央構造線全体の動きに重要と思われるので、精度を高めるためにも九州まで含めた解析が必要である。(5)地震核の解明、および地震の影響範囲を知る上でも動的な解析が必要である。(6)関東地域は活断層評価のためのもっと詳細な解析が是非必要である。柏崎・千葉構造線は、糸魚川・静岡構造線が破壊しても単独では殆ど動かないが、八王子線を含む東北マイクロプレート境界の影響を入れた場合かなり大きな変動量を示し、安政江戸地震の広範囲な強振動をある程度説明可能である。(7)糸魚川・静岡構造線の破壊により伊那谷断層、さらには豊田市の猿投断層まで破壊が進展する。
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