研究概要 |
地盤が比較的弱い能登半島で毎年多発する斜面崩壊を解析するため,過去10年間に亘って開発してきた岩・水連成安定解析手法を,白山山系における超大規模なスベリ・崩壊現場に適用した.この巨大な尾根の測量を5年前からはじめたところ,5年間で1.5m程尾根全体がずり落ちていることがわかった.尾根の両側は別当谷,甚之助谷と呼ばれ,明治以来砂防工事が続けられているが,,砂防ダムが10m以上も移動し倒壊例も多い. 研究代表者らが開発し,これまで主として能登半島での斜面崩壊の解析に用いてきた安定解析手法は,地山中の断層や亀裂に沿って,多面体の岩塊がすべる現象を解析するものである.弱面に夾在するすべり粘土の力学試験を行う必要があり,また,多面体岩ブロックに働く地下水圧を推定することが安定解析上重要なキ-ポイントである.うすいスベリ粘土の採取方法や力学試験についても,これまでの研究で充分の工夫をこらしてきたつもりである. この巨大尾根の安全率を求めるのが最終目的であるが,本研究では,巨大尾根の周辺で過去に発生した超大規模スベリ・崩壊を解析対象とした.スベリ面を形成する軟弱材料を採取し,力学試験をとりおこない,地山中の地下水の分布状況と年間の変動の実体を調査した.そのうえでスベリ・崩壊を解析し計算上の安全率が1に近くなり,実際にすべった事実とうまくつじつまが合うかどうかを調べた.
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