市販の簡易ディジタルカメラ(たとえば、広角カメラで画素数700×500程度のもの)でも、ディスプレイ上での測点観測誤差を角度誤差に直すと80〜130秒程度にすぎないことがわかった。換言すれば距離10m離れた場所での横方向誤差が4〜6mmにすぎない。ところがレンズのひずみによる誤差が極めて大きく、その補正が必須となる。そのために、写真から正確に被写体座標を求めるためにレンズに非線形ひずみを考慮に入れた標定を行うことにした。非線形パラメータは2〜4個くらいまでを採用すればよく、それ以上多くのパラメータを用いても効果は少ない。 単写真による画像計測であれば市販の各種の画像処理用プログラムを用いることができる。ただし、拡大観測をするためには三次式による内挿が必須であり、像のボケを直すプログラムを持っているものが役立った。他種類のカメラから得られた記録を処理するためには、多様な画像フォーマットのデータを受け入れることのできるソフトを準備しておかなければならない。 画像自体にレンズによる非線形ひずみの補正を行っておけば、正射画像(正投画像)を作成するときに非線形交換を考慮する必要性は認められなかった。被写体が多数の平面から構成されているときには、面の交線の両端点が同一座標値となるように線形変換を行えばほぼ満足すべき結果が得られる。成果はディジタルデータとして保存すればよいのは当然であるが、A4判の大きさ以下の寸法であれば市販の比較的安価な装置で十分文化財調査に耐えうるハードコピーを作ることができる。
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