高齢者の積極的な道路交通への参加をねらい、運転特性を明確にすることで安全で利用しやすい道路交通施設建設のための指針を示す目的で平成6年度、7年度で研究を行った結果、以下の成果を得た。平成6年度の研究から、(1)高齢者自身が車を運転して社会参加する、(2)曲線半径が200mを境にして高齢者と若齢者の差がアクセレレーションノイズや減速度の最大値などの走行指標に現る、(3)心理的な感覚尺度からも曲線半径が200mと50mでは重みが6倍となる、(4)ハンドル操作のスペクトル解析から、曲線半径が大きくなるとハンドルを微調整することが高齢者に多くみられ、このような不安定なハンドル操作は高速運転時には危険である などが分かった。 平成7年度の研究からは、(5)ハンドル操作についてもアクセレレーションノイズと同様にステアリングノイズが定義でき、高齢者のうちでも女性運転者が極端に大きく、男性の5倍にも達した、(6)曲がりにくさの一対比較では、中年者と若齢者は半径50mと他の曲率半径の違いを明確に評価しているのに対し、高齢者は50mと100mはは明確に区別することができないことが示され、前年度の成果の(3)を修正する結果となった。一方、(7)警察庁開発のK2テストとの相関では、状況判断力および動作の正確さを被説明変数としてステアリングノイズとアクセレレーションノイズを説明指標とする重相関モデルが最も優れた運転技術診断モデルとなることが示された。 過去4年間の研究から、自動車運転シミュレータを用いることにより、(8)高齢者の運転技術診断が可能、(9)曲線半径を中心とした幾何構造上の問題点を明らかにすることが出来るシステムに改良できた。今後の課題は、高齢運転者の最大の欠点である複合危険事象発生時の回避行動が訓練できるシステムに改良する必要があることが分かった。
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