研究概要 |
1.海洋投棄廃液の陸上処理法の確立 (1)複合処理装置による難分解性廃液処理実験:昨年度に基礎を確立した複合処理装置(上向流式嫌気性ハイブリッドブランケット(UAHB)法+二段接触酸化法)によって,従来処理が困難であり海洋投棄に委ねられてきた硫酸塩等の各種の塩類・アミノ酸および有機物を高濃度に含むアミノ酸系発酵工程廃液の処理実験を行った。UAHB法による廃液処理では,スラッジベッド上部にろ床を設けるこのUAHB装置の有効性が実験的に明らかとなった。また,反応槽内のpHを制御することにより,メタン発酵菌と硫酸還元菌との共存が成立し,硫酸還元菌によるメタン発酵菌への阻害の発現を阻止し得たことは,大きな研究成果であると考えられる。二段接触酸化法による,UAHB装置からの処理水中に残存する有機物のさらなる浄化とアンモニア性窒素の硝化については,UAHB装置に流入する基質の濃度および水理学的滞留時間の変動によりその処理水,すなわち二段接触酸化装置への流入水の濃度が変化したにも関わらず,有機物除去に関しては良好な処理結果が得られ,硝化についてもほぼ満足できる結果が得られた。 (2)高塩類・高濃度有機性廃液処理:装置のスタートアップ段階において塩分希釈馴致を行った結果,塩分存在下での難分解性のスルファニルアミンの分解が可能となり,一段目で酢酸を分解させ,2段目でのスルファニルアミンを分解させる2段生物膜法が実用化の見通しが得られた。 (3)膜分離高濃度活性汚泥法:オゾンによる難分解性物質の易分解性物質への変換が実証でき,3段処理による写真廃液処理の有用性および実用化の見通しが得られた。 2.海洋流入廃棄物の海洋環境影響 栄養塩類の外洋流入の影響について,主として黒潮海域について検討を昨年度の結果を踏まえて継続した。その結果,現行の沿岸域での浄化作用はほとんど期待できず,その大部分がそのまま外洋に流出している現実から,また外洋の受容量の大きいことから,生態系への影響は現状とほぼ変わらないことが推定された。また,魚の挙動を把握するための実験結果の解析をもとに,沿岸海域の魚類を頂点とした生態系モデルを構築し,それによるシミュレーションを行った。 平成7年度の研究計画に対して,陸上処理法については満足できる成果が得られた。また,海洋投入廃棄物の海洋環境への影響についても栄養塩類の管理に関する所定の成果が得られ,生態モデルシミュレーションに関する研究も順調である。
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