研究概要 |
当該年度は,パルス化システムの開発を行った.以下に,設計した超短パルス低速陽電子線ビームラインの仕様を述べる.なお,現在,ビームラインは組立・調整中である.陽電子線源として,放射性同位元素(_<22>Na,50 mCi)を利用する.放射性同位元素から放出された陽電子は,モデレーターに入射し,低速陽電子へ変換される.初年度で開発した,Wコンバータ-とNiコーン型モデレーターにより,直流ビームの場合,10^5 e^+/s程度の陽電子ビーム強度を得ることができると予想される.モデレーターから放出された低速陽電子は,磁場と電場により試料方向へ導き出される.線源部と試料部の間には,高エネルギー陽電子と低速陽電子を分離するためのエネルギー弁別器が設けられる.エネルギー弁別の手法として,電場により軌道を変える手法(EクロスBフイルター,Eは電場,Bは磁場)を用いる.エネルギー弁別を行った後,低速陽電子を任意のエネルギーに加速するため,線源部全体に電圧をかける.任意のエネルギーに加速された陽電子は,試料に打ち込まれる.次に,陽電子ビームをパルス化する装置の概略について述べる.また,入射した直流(DC)の低速陽電子ビームを,チョッパーで断続する.ここでは,グリッドにパルス電界をかけることにより,半値幅が5 ns程度のパルスを作り出す.チョップされたビームは,バンチャーの周波数の整数分の1の動作周波数のサブ・ハ-モニック・プリ・バンチャーと150 MHzの動作周波数のバンチャーで圧縮される.コンピューター・シュミレーションにより,ドリフト・チューブを通過した後のパルス幅は100 ps程度であると予測される.寿命測定は,パルス化装置のタイミングパルスと,光電子増培管で検出した消滅γ線の時間差を測定することにより行う.
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