電子顕微鏡内その場実験は材料の構造変化、材料中の欠陥の性質などに関してユニークな情報を与えるが、これまでは主として高温での現象が観察されてきた。しかし、最近では超伝導で代表されるように極低温での現象の電子顕微鏡内その場観察にも関心が集まっている。しかし液体ヘリウムを用いた電子顕微鏡内極低温その場実験は極めて大がかりとなり、しかも液体ヘリウムの取り扱いにはかなりの熟練を要するため、その実施はごく一部の研究グループに限られてきた。 一方、最近、高性能の圧縮機を用いた冷凍機によって極低温が容易に達成できるようになり、超伝導マグネットなどで実用化されている。本研究はこの冷凍機を電子顕微鏡内試料冷却ホルダーに接合して、電子顕微鏡内極低温その場観察がルーチンワークとして容易に遂行できるような装置を開発することを目的とする。 本年度は冷凍機の性能をチェックすると同時に、電子顕微鏡内試料冷却ホルダーとその冷凍機への接合に関する基本設計を行った。すなわち、冷凍機の容量と熱伝導率を考慮して到達温度を評価するとともに、冷凍機の運転に伴う振動の回避法について検討した。
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