高温超伝導体の磁束格子を観察する極低温走査トンネル・磁気力顕微鏡装置を設計するに当たり、まず探針と試料の相互作用のシミュレーションを行った。その結果、走査磁気顕微鏡で検出できる磁束格子の磁束密度は、1000G以下で、500G近傍で最大の分解能を示す。この条件で探針にかかる力は最大で10^<-10>Nで、個々の磁束量子を分解するには、10^<-12>Nを検出できないといけない事がわかった。そのため検出方式は、感度をあげるためにカンチレバ-と光ファイバー間のレーザー光の多重干渉方式を採用し、さらにカンチレバ-の共振周波数の変化を検出する方式としたする。この方法では、10^<-14>Nが検出できる。 また真空系の改良を行い、ターボ分子ポンプを使用して試料室内を10^<-5>Torrの真空度が保てるようになり、試料表面への氷結が低減できるようになった。 探針先端の加工の基礎実験として、FIBによる金属膜の研磨条件を調べた。その結果これまでのアルゴンイオンミリングの結果と全く異なった材料に対する依存性が見出された。 レーザー干渉計の組立の過程において、光ファイバーへのレーザー光の採り入れ取り出し部の調整において問題が生じた。これはHe-Neレーザー光でシングルモードを保つためファイバー径を約6μmとしたため調整に高い精度が要求されるためで、調整法の習熟と、調整機構の高精度化が必要となった。 また分解能向上のため、電子回路におけるア-スノイズの低減が必要となった。このため、デジタル回路とアナログ回路間の信号線とア-ス線にフェライトコアを入れて高周波抵抗を増大させることにより、制御用コンピュータよりア-スラインを通じて伝送されていたクロックノイズを低減させた。 平成6年度において装置の個々の部分はほぼ完成した。平成7年度は全体を総合して動かせて調整を行い、また使いやすさを向上する改良を行いながら、実際の試料を観察を行っていく。
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