研究概要 |
固体/水溶液界面に関する原子レベルでの構造の情報は,電気化学反応を含む工業プロセスや学問に不可欠であるが,高真空を必要とする低速電子線回折や高分解能走査電顕など一般的な表面回折法を適用することができない.最近,走査トンネル顕微鏡や放射光を利用したX線全反射法による研究報告が数例あるが,その他は申請者らの知る限り全く皆無である.そこで本申請では,既存の高輝度回転対陰極型X線発生装置を利用し,X線全反射法による固体/水溶液界面構造解析用回折装置および水溶液試料セルを作製し,固体/水溶液界面構造解析のために有効な装置を開発することを目的とした. 本装置を試作する上で最も工夫した点は,本試作装置の測定対象が自由液体表面及び固液・液液界面であるため,水平な液表面あるいは界面からのX線反射強度あるいは全反射回折強度を測定できるように装置を設計しなければならない点であった.この点を解決するために,本試作装置では既存のX線ターゲットからのX線が発散光である点に着目し,この発散光の一部を光学系を工夫して取り出し,試料表面に見込み角αで入射させるように設計を行った.この方法によって既存装置を最大限利用し,装置開発の費用をできるだけ圧縮することに成功した.本試作装置の基本性能を調べる目的で,水および水銀の自由表面,さらには水銀/水界面からのX線反射強度の測定を行い,報告されている反射強度プロファイルと比較したり,反射の臨界角から密度を見積もったりした.その結果,液体の自由表面,固体/水溶液界面からのX線反射強度および全反射回折強度測定を行うことが可能な装置を試作することができた.
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