研究概要 |
本研究は、透明電極膜として実用化されているIn203-SnO2(Indium Tin Oxide, ITO)に積極的に配向性を持たせて薄膜を形成することにより、より高い電気伝導を実現することを目的とした。その配向性を制御する方法として、独自の方法を提案した。ガラス基板上に{001}の配向性を示すZnO膜をあらかじめスパッタリング法で作成し、その膜上にITOをヘテロエピタキシャル形成することで、{111}方向に配向を制御したITOを作成することが可能となった。この方法の特徴は、単結晶基板のような非常に高価なものでないアモルファスのガラス基板上に配向を制御した薄膜の作製が可能である。このような方法はまた、連続プロセスで行うことが可能であるから工業的にも非常に有為である。配向性を制御することと、ITO薄膜の電気伝導度とは直接には関係がないことがわかったが、配向を制御したITO薄膜中のSnのド-ピング量が、ターゲット中に含まれるSn量や、ただのガラス基板上に同条件で作成した時のITO薄膜中のSn量と異なっていた。このSn量の変化は、ITO薄膜の電気伝導性に多大な影響を及ぼすが、薄膜の配向を制御することでターゲットとは異なったSn量のITO薄膜が作成ができる可能性が見いだされた。さらに、ITO中のSnの存在形態をメスバウア測定を行うことでSnの存在形態を調べ、電気特性との関連について検討した。上述の方法で作成した薄膜では測定を行うことができなかったが、粉末で作成したITOについて測定を行い、得られたメスバウアスペクトルを詳細に検討した。In203格子中には、Inサイトが2種類存在するが、まずSnは結晶学的座標でいうbサイトに置換固溶し、そしてド-ピング量が増えるにつれ、dサイトに固溶し、さらに固溶量が増加するとSnOxのような形態でITO中に存在すると考えられ、この解析結果はITOの示す電気特性と一致している。
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