研究概要 |
生体活性粒子の懸濁液中に材料を浸漬し超音波振動により粒子を材料表面に打ち込む,超音波インプランテーション(US-IP)に関する実験を行なった。 1.ポリメタクリル酸メチル(PMMA)-50CaO・50SiO_2生体活性ガラス粒子系 最適懸濁液(40THF-60エタノール(vol%))中でPMMA基板をUS-IPすると,ガラス粒子は不均質に表面に打ち込まれた。これはある程度の空間的規則性をもって超音波エネルギーが集中するためと考えた。すなわち,集中領域では,PMMA基板-深部ガラス粒子層(40μm)-PMMA層(60μm)-表面ガラス粒子層(40μm)-表面PMMA被膜(<5μm)の様に,基板上に4層構造が確認された。集中のない領域では,PMMA基板-表面ガラス粒子層(40μm)-表面PMMA被膜(<5μm)となっていた。いずれの場合も,表面の被覆膜は低密度で擬似体液は十分通過できるため,擬似体液浸漬後,表面ガラス粒子にはアパタイトが析出していた。また,ガラス粒子量を減じた懸濁液でUS-IPしたとき,PMMA基板表面は約10μm径の孔が不規則蜂の巣状に観察された。 2.シリコーン-50CaO・50SiO_2ガラス粒子系 重要な生体高分子材料の一つであるシリコンゴムにも,同じガラス粒子を各種の分散液に懸濁させてUS-IPを試みたが,基板の膨潤条件がつかみにくい。そこで,2液型室温硬化型シリコーンのゲル化硬化途中で,エタノール(100%)を分散液にUS-IPすると,ガラス粒子がほぼ均一に表面に打ち込まれ,擬似体液中でアパタイトを析出し生体活性が付与できた。しかし,ゾル-ゲルシリカ粒子およびFumed silica(コロイドシリカ)懸濁系ではUS-IP打ち込みは可能でも,生体活性は示さなかった。これは,粒子自身の性質に依存するものと考えられた。
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