マンガン系複合酸化物を正極活物質とするリチウムイオン電池の開発

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 06555188
• 研究機関: 佐賀大学
• 研究代表者: 芳尾 真幸 佐賀大学, 理工学部, 教授 (60037885)
• 研究分担者: 磯野 健一 佐賀大学, 理工学部, 助手 (20232374) ; 野口 英行 佐賀大学, 理工学部, 助教授 (60093978)
• キーワード: リチウムイオン電池 / 正極活物質 / マンガン / スピネル構造 / 負極活物質 / グラファイト / サイクル特性 / 高温特性

研究概要

本年はスピネルマンガン系正極材料および負極炭素材料を中心に研究を進めた。スピネルマンガンは常温近傍で充放電を行う場合は比較的サイクル特性は良好であるが作動温度50℃と高くなるとマンガンが溶解しサイクル特性の劣化が著しい。この原因は電解質のLiPF_6が水分と反応し生成するHFによることを追認した。HFによるMnの溶解は化学量論スピネル化合物では大きいものの、サイクル特性の良好なリチウムリッチスピネル化合物ではMnの溶解は小さいことを初めて明らかにした。この成果はJ.Power Sources誌に本年掲載されることが決定している。この結果から考え、電解液中の水分を除くことも重要ではあるが正極活物質としては高温作動時のサイクル特性の良好なリチウムリッチスピネルを用いる方がよいことがわかった。また、学術的にはスピネルマンガンの1回目の充電容量がMn(III)の分析値と非常に良く一致することを見いだし、スピネル化合物の構造式に基づいた容量の理論式を提案した(電気化学誌本年5月掲載、J.Electrochem.Soc.投稿中)。この中で化合物の組成と電気化学的特性を同時に表示できる相図も提案した。
グラファイトを負極に用いた場合の問題点は電解液に使用される溶媒の分解が大きいことである。プロピレンカーボネート(PC)は低粘度の優れた溶媒であるが分解しやすい難点がある。リチウムイオンに溶媒和していない遊離のPC濃度を減らすことにより溶媒の分解が抑制できることを明らかにし、J.Power Sources誌上で公表した。また、天然グラファイトに超音波処理を施すとグラファイト結晶のc軸方向に切断され、薄片化する。この超音波処理グラファイトはリチウムイオン電池負極として優れた性能を有することを見いだし、放電容量が結晶学的性質(a軸方向およびc軸方向の結晶子の厚み)と深く関連することを明らかにした。この成果はJ.Power Sources 誌に投稿中である。

研究成果

• [文献書誌] Y.Xia: "An Investigation on the lithium ions inscrition into the spinel structure Li-Mn-O compounds" J.Electrochem.Soc.143. 825-833 (1996)
• [文献書誌] 芳尾真幸: "溶融含浸法によるリチウム電池正極剤の合成とその電池時性IV.化学量論スピネルLiMn_2O_4 および非化学量論スピネルLi-_xMn_2O_4の合成とそのリチウム電池正極特性" 電気化学. 64. 388-393 (1996)
• [文献書誌] Y.Xia: "Preparation for the spinel compounds by the melt-impregnation method" Progress in Batteries and Battery Materials. 15. 154-160 (1996)
• [文献書誌] Y.Xia: "Studies on a Li-Mn-O spinel system (obtained by melt-impregnation)as a cathode for 4V lithium batteries III" J.Power Sources. 63. 97-102 (1996)
• [文献書誌] H.Nakamura: "Suppresion of electro chemical decomposition of propylene carbonete at a graphite anode in lithium-ion cells" J.Power Sources. 62. 219-222 (1996)
• [文献書誌] Y.Xia: "Studies on a Li-Mn-O spinel system (obtained by melt impregnation)as a athode for 4V lithium battery IV.High and Low temperature performance of LiMn_2O_4" J.Power Sources.
• [文献書誌] M.Yoshio: "Effect of addition of silver compounds during pyrolysis of manginae nifrate on fanterium anode oxidefilm." J.Power Sources. 50. 193-196 (1996)
• [文献書誌] M.Yoshio: "Foliated natural graphite as anode materials for rechargeable lithium ion batteries" J.Power Sources.
• [文献書誌] 員永姚: "溶融合浸法によるリチウム電池正極剤の合成V.スピネル構造Li_xMn_2O_<4+y>の化学量論と電池容量" 電気化学.
• [文献書誌] M.Yoshio: "Lithium Ion Batteries" Progress in Batteries and battery Materials.
• [文献書誌] Y.Xia: "Characterization of the capacity and rechargeability of spinel compound as a cathode for 4V Li-Cells" Progress in Batteries and Battery Materials.
• [文献書誌] 芳尾真幸: "最近のリチウムイオン二次電池:材料と応用" 日刊工業新聞社, (1996)