研究分担者 |
草加 勝司 大同特殊鋼(株), 研究開発本部, 主管研究員
渡辺 隆二 日立製作所(株), 日立研究所, 薄膜研究参事
山内 清 (株)トーキン, 材料研究所, 新素材研究部長
貝沼 亮介 東北大学, 工学部, 助教授 (20202004)
大谷 博司 東北大学, 学際科学研究センター, 助教授 (70176923)
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研究概要 |
Ni-Al系及びCo-Al系に出現するCsCl型のB2構造を有するβ相は、耐熱、耐酸化材料、形状記憶合金、制振材料、磁性材料、半導体基板材料、電極材料等の多機能を有する材料として魅力ある金属間化合物であるが、その脆さが実用化を推進するための最大の障害となっていた。本研究は、相平衡の情報に基づいた組織制御を用うことによって、新しい機能が期待させる高加工性β基合金の開発を目指すもので、結果は以下の様にまとめられる。 1.状態図の熱力学的解析:Ni-Al-Mn、Ni-Al-Co、Ni-Al-Fe系のNi側の相平衡を実験的に決定し、その情報に基づいて熱力学的解析を行った。これによって、これらの系における全温度、Al側を除く全組成領域について、平衡相、平衡組成、相の体積分率等を瞬時に計算しうる体制を確立した。 2.耐酸化高温材料:耐酸化高温材料を開発するため、高温強度に富むγ'(L1_2)と耐酸化性に優れたβ(B2)からなるβ(B2)+γ'(L1_2)2相合金化が有望である。しかし、脆い金属間化合物の組み合わせからなる、β+γ'合金は、極めて脆く、通常の方法では製造が困難である。そこで本研究では、計算状態図を利用して様々な組織制御を試みた。その結果、高温でβ+γ2相、低温ではβ+γ'2相となる合金を選択し、加工熱処理を工夫する事により、靱性に富み高い強度を有する微細多結晶β+γ'2相合金を開発することができた。 3、形状記憶及び制振合金:マルテンサイト変態温度を熱分析により測定し、Ni-Al-X(X:Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,etc.)3元系β相合金の組成とMs点の関係を明らかにした。以上の研究結果から、高温形状記憶を得るために有用な添加元素は、Mn、Fe、Coであることを見いだした。以上の結果と計算状態図の情報から、100〜600℃という高温度領域で形状記憶を示すNiAlFeMn系β+γ2相合金を得ることができた。また、本合金は、制振特性も示し、しかも他の制振合金に比して格段高い降伏応力を有するという特徴があることが分かった。
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