研究成果は次のように要約される。 (1)TZP-βスポジュメンガラスの超塑性変形特性を詳細に調べ、粒界ガラス相の存在によりTZPの変形応力が低下すること、延性がジルコニア結晶粒と界面の強度で支配されていることを示した。 (2)TZPに粒界SiO_2相を添加することによって、高温延性を顕著に改善できる。ところがSiO_2に少量のドーパントを添加すると、延性が劣化することを見出した。ガラス添加TZPの超塑性は、ドーパントによる粒界結合状態の変化に敏感であるといえる。 (3)SiO_2添加TZPの粒界構造を、高分解能電顕により詳細に解析した結果、アモルファスSiO_2相は粒界3重点あるいは4重点に存在し、粒界面には存在しないことを見出した。従来の理解とは異なり、Si^<4+>イオンは粒界面に偏析して粒界結合状態を変化させるが、アモルファス相とはなっていない。 (4)TiO_2添加-TZPの超塑性について、従来の理解からは説明不可能な新たな現象を見出した。TiO_2添加は、TZPの結晶粒を大きくするが変形応力を低下させ、しばしば延性の改善をもたらす。この結果を説明するための新しい現象論的解析を提案した。 Al_2O_3系セラミックスについても、変形応力、延性に関して新しい現象を見出した。この解釈には粒界構造および総合状態の理解が不可欠である。
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