研究課題/領域番号 |
06555211
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
柴田 俊夫 大阪大学, 工学部, 教授 (90001205)
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研究分担者 |
大中 紀之 (株)日立製作所, 日立研究所, 主任研究員
春名 匠 大阪大学, 工学部, 助手 (70243186)
藤本 愼司 大阪大学, 工学部, 講師 (70199371)
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キーワード | ステンレス鋼 / 光電気化学応答 / 半導体 / 不働態皮膜 / He-Cdレーザー / 紫外線 / 孔食 / 出生死滅確率過程 |
研究概要 |
ステンレス鋼の耐環境性材料に生成する不働態皮膜は半導体性質を持つため紫外線照射は光励起が起こり、光電気化学反応が生じる。不働態皮膜に関する光電気化学反応については皮膜の構造解析などの評価法として様々な研究がされているが、紫外線の腐食反応そのものに対する効果はほとんど研究の対象となってこなかった。しかし、最近ニッケル・鉄・あるいはオーステナイト系ステンレス鋼に紫外線を照射することにより局部腐食の一形態である孔食を抑制したとの報告があり、光の不働態皮膜修復機能に対する効果を検討する必要がある。本研究では塩化物水溶液中にてSUS304ステンレス鋼に紫外線を照射することにより孔食挙動がどのように変化し、さらにどのような機構によりステンレス鋼の不働態皮膜の自己修復機能が強化されたかを検討した。光源には出力35mWのHe-Cdレーザーを用いた。不働態皮膜の形成中に紫外線を照射すると孔食発生電位は最大で約80mV高くなり耐孔食性の改善が確認された。孔食発生の直前から紫外線照射した場合でも孔食電位の上昇が見られたがその程度はやや小さかった。また、光強度を変化させると、強度の増加とともに孔食電位は貴に変化したが本研究の範囲内では最大値が見られ、それ以上ではやや低下したので、必ずしも耐孔食性の改善の効果だけではないことが分かった。一方、孔食発生までの時間を多数測定し出生死滅確率過程論により解析したところ、不働態皮膜の形成過程に紫外線を照射したとき孔食の発生速度は著しく低下し、また再不働態化速度はやや増加を示し、いずれも孔食発生の抑制に寄与することが分かった。一方、孔食発生直前での紫外線照射は再不働態化をやや促進する程度であった。紫外線照射後の不働態皮膜をX線光電子分光法にて解析すると、皮膜中のクロム含有率が照射なしのときに比べ約15%増加しており、すなわち不働態皮膜への紫外線照射は耐環境性を強化する構造制御を行っていることが分かった。
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