本研究では、従来極めて困難と考えられていた濃度が小さく、かつ経時変化が大きくい窒素酸化物およびその生成反応に関与する各ガス種の濃度定量を迅速に行う方法を開発した。原理的には、フーリエ変換を用いる分散型赤外分光分析法(FTIR)であり、検出限界および90%応答について、それぞれ、0.5ppm、3sを達成した。具体的には、広範囲の赤外線吸収帯を持ち、窒素酸化物の吸収ピークに影響を与える水蒸気を、分子交換膜製の多重パイプを使用した水蒸気交換器により単時間で除去すると同時に、CO_2、メタン、残留した水蒸気などの影響を受けないピークを分散型赤外線分析に適用することによって、精度の高い定量が可能となった。 本研究で開発した窒素酸化物測定法のその他の特徴等を以下に示す。 1)濃度定量用ソフトウエアー:定量対象ガス種に対応する最適測定波数範囲を考慮したスペクトルデータの高速演算、保存処理を可能とするアルゴリズを構築した。これは、FTIRの移動鏡のしゅう動速度の高速化および精密制御により実現した。 2)微小容積、長光路ガスセル:容積100cc、10mの光路長をもつガスセルを採用すると共に、セル内のガス流れ特性を検討し、ガスの滞留を極力防止することにより、応答速度の短縮を行った。 3)モデルガスおよび燃焼排ガスの測定:標準ガスおよび混合ガスを用いた試験測定、各ガス種に対する検量線の作製を行った。これを利用して、鉄鉱石焼結プロセスをシミュレーションした充填層型のコ-クス燃焼装置から排出されるガス中の各種NO_X定量を行い、本方法が有効であることを確認した。
|