研究課題/領域番号 |
06555234
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
中野 義夫 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 教授 (30092563)
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研究分担者 |
清田 佳美 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助手 (60216504)
沢山 茂 三菱化学(株)総合研究所, 化成品研究所, 部長研究員
木村 元彦 静岡大学, 工学部・物質工学科, 講師 (20195382)
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キーワード | イオン性高分子ゲル / 物質移動 / インターペネトレートネットワーク / ドナン平衡 / 膨潤・収縮 / 屈曲機構 / 電場 / 最適操作条件 |
研究概要 |
高分子ゲルネットワーク内におけるイオンおよび溶媒の移動メカニズムの解明: 電界質水溶液中で板状ゲル(素子)に電場を印加するとゲルは陰極側に屈曲した。種々の電場強度、電解質濃度においてゲルの屈曲速度、最大屈曲角(屈曲特性)を明らかにした結果、これらの値を最大にするゲル内イオン基濃度に依存した最適条件が存在することわかった。新たに考案したゲル粒子充填型電解セルを用いて電場印加時におけるゲル内の物質移動と膨潤率分布を測定した。ゲル内の対イオン(Na^+)濃度は陽極側より減少し、これに応じてゲルの膨潤体積も陽極側より大きくなることが明らかとなった。素子を運動させる基本的な機構は、素子内のイオン濃度分布が経時的に変化すること並びにこのイオン濃度分布に依存してゲルの浸透圧が変化し、素子内に応力分布を形成することが主要な要素であることが明らかとなった。素子膜の屈曲機構に及ぼす関係イオンの種類、価数の影響を実験的に調べた結果、屈曲特性は電解質水溶液中のゲルの膨潤特性に強く依存していることが分かった。これにより、ゲル内に生じるイオンの濃度分布を種々調整することによって、ゲルの屈曲する方向を制御できることを実験的に裏付けることが出来た。ゲルの屈曲速度を向上させるゲル内の固定基濃度の上限値が存在することが分かった。 イオン、溶媒の移動メカニズムとゲル構造の相関性および理論モデルに基づく設計手法の確立: 素子の運動特性についてドナン平衡理論に基づく解析を行った。屈曲速度を最大にする設計指標として、ドナン比が有効であることを示した。屈曲速度を最大にする分子設計、溶液設計の指針を得、理論的にもドナン比によりこれらの条件を一意に決定できることを明らかにしたゲルの膨潤率分布をゲル内に生じる応力分布に換算し、これを基に梁の純曲げ問題と対応させて板状ゲルの屈曲挙動を推算したところ、板状ゲル膜の電場における屈曲挙動を良好にシミュレートすることができた。素子内に経時的に発生・変化する応力分布を実験的に定量化する手法、これに基づき解析的に素子の運動パターンをシミュレートする手法を開発した。
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