研究概要 |
アクリル酸プラズマグラフト重合膜によるCO_2の促進輸送 ポリエチレン微多孔質膜(孔径0.03μm,膜厚13μm,気孔率60%)の孔内にアクリル酸をプラズマグラフト重合することにより,新規なイオン交換ゲル膜を得た。得られた膜のイオン交換容量は13meq/g,含水率は80%であることがわかり、本膜は非常に膨潤し易く,イオン交換容量も市販の膜の3-10倍という高機能膜であることが明らかとなった。得られた膜中にエチレンジアミン(EDA,CO_2の担体)をイオン結合により固定したハイブリッド促進輸送膜について,CO_2/N_2の透過分離実験を行った。原料側CO_2分圧が0.047atmの場合,CO_2/N_2の選択性は4700にも達した。また,その場合のCO_2透過速度も1x10^<-4>cm^3/(cm^2scmHg)と,本促進輸送膜は高選択性と高透過性を合わせ持つことが明らかとなった。ボイラー排ガス中のCO_2の膜分離において,有効な一段での操作を行うためには,CO2/N2の選択性が200以上必要と報告されているが,市販の高分子膜では選択性は40程度,研究段階のものでも通常の高分子膜では選択性が100を越えるものはない。本研究で得られた膜は選択性が,要求されている値のさらに1桁以上大きく,実用化に対して大いに期待が持てる。通常のろ紙にEDAを含浸させた場合には,30分程度で選択性が失われてしまったが,本膜は安定性においても良好な結果を示した。これは,静電相互作用による担体の安定化と,アクリル酸の高吸水性に基づく膜溶液の安定化によるものと思われる。 固定キャリヤ-膜によるCO_2の促進輸送 メタクリル酸-N,N-ジメチルアミノエチル(DAMA)をポリエチレン多孔質膜にプラズマグラフトした膜を作製した。DAMAはCO_2と親和性のあるアミノ基を有するため,EDAのような担体を膜中に導入することなく,固定キャリヤ-膜として機能することが期待できる。DAMAグラフト膜は湿潤状態でCO_2/N_2の選択性が130という値を示したが,これは液膜以外の膜の選択性としては,これまでの報告値の最高値と思われる。
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