本研究は、酵素反応と同時に生成物を反応系外に抽出分離する手法を用い、更に遊離酵素の連続利用を可能とする新しい生理活性ペプチド連続合成プロセスの開発を目的としている。人工甘味料アスパルテ-ム前駆体(Z-APM、F-APM)連続酵素合成を主に取り上げ、以下の知見を得た。 A)アスパルテ-ム前駆体(Z-APM)連続合成に関し、 本酵素反応の最適pHは6.5であり、低pHにおいて酵素活性が著しく低下する。しかし低pHにおける本合成手法ではZ-APMの分配比向上による反応収率の向上、基質_L-PheOMeのアルカリ加水分解の抑制、水相内における基質Z-_L-Asp濃度の低下による安定操作の実現等の利点を持つ。低pHにおいてZ-APM連続合成実験を実際に行い、原料基質Z-L-Asp基準で95%以上という極めて高い転化率を維持して安定にZ-APMを合成することが出来た。更に基質濃度を高めた実験を行い、低pHにおいて高生産性が実現可能なことを明らかにした。又、水/有機溶媒二相系バイオリアクターの定常濃度解析の為のモデルを確立し、実験結果及び解析結果の良好な一致を得た。 B)安価な基質F-_L-Aspを用いた新規ペプチドであるアスパルテ-ム前駆体(F-APM)連続合成に関し、 種々の有機溶媒あるいは抽出試薬を用いた水/有機溶媒二相系において、基質F-_L-Asp及び生成物F-APMの分配比を測定した。その結果トリブチルリン酸(TBP)が本手法によるF-APM連続合成に最適であることを明らかにした。一般的操作法である水一相系ではF-APM合成反応収率は1%未満であるが、本合成法に基づく水/TBP二相系において原料基質F-_L-Asp基準で95%以上の収率を得た。又アンモニウム塩等の抽出試薬や塩を添加することによって、収率が著しく向上することを見出した。
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