研究概要 |
細胞のストレスに対する応答特性をリアルタイムかつin vivoで評価するシステムを開発するために、マルチ型サブミクロンキャピラリーを製作した。このキャピラリーはストレスシグナル印加用とストレス応答シグナル測定用の2種類より構成されている。ストレスシグナル印加用のキャピラリーからは、細胞に電気化学的、及び化学的ストレスを印加し、それぞれのストレスに対する細胞応答をストレス応答シグナル測定用のキャピラリーを用いて細胞内電位及びイオン濃度(H^+,K^+,CI^-)の測定を行った。2種類のキャピラリーを組み合わせたサブミクロンキャピラリー(3連型)を用い、まず、植物細部への適応を試みた。すなわち、オオムラサキツユクサ(Tradescantia uirginiana L.)生葉を用い、その特定の細胞のみにサブミクロンキャピラリーを刺入し、ストレスシグナル印加用のキャピラリーからイオン性分子(H^+,K^+,CI^-)を電気泳動的に導入し、電気化学的ストレスを与えた。そして、このときに生じる細胞内電位変化とH^+,K^+,CI^-の濃度変化をストレス応答測定用のキャピラリーにより測定した。その結果、H^+,K^+,CI^-を導入したところイオン濃度の増大が認識され、細胞内電位も同時に変化していることがわかった。 次に、化学的ストレスの印加について検討した。pH変化を伴う酵素を加圧法により導入し、この導入量をpH電極で測定する系を考えた。pH変化を伴う酵素反応として、ルシフェラーゼ反応とウレアーゼ反応を選んだ、ピコポンプにより基質液(ルシフェリンよATPの混合液)を導入したところ、特にpH変化は認められなかったが、ここで酵素を導入するとpHの減少が認められた。このpH変化量と導入されたルシフェリンの濃度の間には相関関係が認められた。また、ウレアーゼについてもpH変化量と導入された尿素の濃度との間に同様の関係が得られた。したがって、中性分子も一定量の分子を化学的シグナルとして細胞内に導入できることがわかった。以上の結果から、マルチ型サブミクロンキャピラリーの基本性能が明らかにされ、ストレスに対する応答特性をリアルタイムで評価するシステムとしての可能性が示された。
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