研究概要 |
本研究では,人工種子生産プロセスの開発を目的とし,特に本年度は,人工種子内封体としての植物毛状根から得られた細胞塊の生産条件および,カプセル化プロセスにおけるカプセル材料の選定,人工種子の保存特性などについて工学的観点からの検討を行った. 1.植物細胞の分化全能性を利用し,人工種子の内封体から数多くの発芽を得るためには,発芽点が多く均一な細胞集団として処理できる未分化細胞集塊を用いることが有利となる.そこで,セイヨウワサビ毛状根を植物ホルモンを含む培地で培養し,細胞集塊への形態変化を可能とする条件について検討を行ったところ,ナフタレン酢酸(オーキシンの一種)とベンジルアミノプリン(サイトカイニンの一種)を含む培地で細胞集塊の収率が向上するすることが分った.また,メロン,ニンジン,ビ-トの毛状根についても同様な検討を行ったところ,メロンおよびニンジンについては,形態変化が起ることが確認された.さらに,セイヨウワサビ毛状根を用いて,植物ホルモンの効果を考慮した形態変化の速度論的解析を行い,種々の植物ホルモン濃度について最適条件を求めることができた. カプセル化プロセスにおいては,細胞集塊とカプセル化剤とを混合後ゲル化し,パラフィンでコーティングすることで細胞生存率の高いシステムを確立した.カプセル化剤としては,固体再性能を保持することができたアルギン酸カルシウムを用い,内封体の長期保存に重要な条件となるカプセル内の水分保持および酸素透過の制限に,パラフィンコートが有効であることが分った.以上のような細胞集塊のカプセル化により,セイヨウワサビでは,保存温度25℃で1ヶ月間の保存後も植物体が再生することが確認された.
|