研究概要 |
目的 細胞内(in vivo)タンパク質フォールディングに関与するタンパク質因子の具体的な役割の解析を行う。次いで、フォールディングに関与する各因子の相互関係を解明すること、また得られた知見をもとにして、遺伝子組換え法により生産された産物の効率的な試験管内、および細胞内巻き戻し法を確立することを目的とした。タンパク質の材料として、マウスハイブリドーマ細胞由来のモノクローナル抗体タンパク質を大腸菌内で高発現させることによって生ずるインクルージョンボディーを設定し、フォールディングに関わる因子として、耐熱性及び耐化学薬品性に優れた好熱菌(Bacillus stearothermophilus)由来のHSP,PPIase,PDIを解析に用いる点で特徴を有している。 【1】各種因子の性格づけ Bacillus stearothermophilus由来の耐熱性ペプチジル プロシル シス-トランス イソメラーゼ(PPIase)遺伝子をクローニングし、塩基配列を決定した。また、フォールディングに関与するタンパク質(Dnak,GroES,GroEL,PPIase,PDI)を遺伝子組換え体等を用いて精製した。耐熱性を含む諸特性について解析した結果、酵母由来の、アルコールデヒドロゲナーゼのフォールディングに寄与し、混合状態で同酵素の熱安定性向上に寄与することが解った。特に、GroELにおいて良好な効果が認められた。 【2】細胞内における組換え遺伝子産物のフォールディング 細胞内における遺伝子産物のフォールディングについて解析した。モノクローナル抗体遺伝子と、HSP遺伝子を同時に大量発現させる系を、T7RNAポリメラーゼ遺伝子発現系にの基づいて構築した。Dnakと抗体タンパク質の同時発現により、インクルージョンボディーの細胞内での巻き戻しが促進されて、可溶性画分に回収される抗体タンパク質量が増加した。可溶性画分からの抗体は、正しくフォールディングしており、同時発現の有効性が示された。
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