研究概要 |
本研究では、これまでのESRスペクトロメーターではえ用いられていなかった、"非断熱過渡信号測定"という独創的な測定原理を用いて、これまでのESRに較べて,感度にして1000倍即ち検出感度10^<-15>モル程度,検出時間にして1/1000即ちマイクロ秒オーダーの性能を持つESRスペクトロメーターを試作する. この目的達成のため,本年度は高速磁場掃引を用いた非断熱測定によるESR信号強度の増大現象について調べた.試料として常磁性緩和が非常に遅い,放射線照射した77Kオルトタ-フェニル中の常磁性中心を用いたところ,通常の断熱条件下での場合の100倍以上の信号強度の増加が観測された. この信号は非定常信号であるため,測定各瞬間での信号にはそれ以前の観測によって誘起された磁化による信号が重畳するため,測定信号を本体のエネルギー領域でのスペクトルに変換することをは簡単ではない.ブロッホ方程式の厳密解を求めることによって,測定時間領域でのスペクトルをエネルギー空間領域でのスペクトルに置き換え,歪のないスペクトルを求める作業を現在進めている。 次年度は,今年度の成果を基に,データ解析の手法を確立するとともに,高速磁場掃引用ヘルムホルツコイルを完成させ,本測定手法を一般的測定法として確立させたい.
|