研究概要 |
本研究では、プラズマ重合を用いるペルフルオロスルホン酸系のイオン交換性薄膜を作製する方法の開発を目指して、質量分析装置を用いて反応中の活性種をその場分析し、反応活性種と形成される膜の構造との関係を明らかにした。また、これによりスルホン酸基をプラズマ重合体に有効に導入する条件を見いだし、架橋構造を有するペルフルオロスルホン酸系カチオン交換性薄膜の開発を行うことを目的とし以下の結果を得た。 1)ベンゼンスルホニルフルオライド(BSF)、ベンゼンスルホニルクロライド(BSC)をプラズマ重合し、プラズマ中の活性種を解析した。BSCを原料として用いた膜はイオン交換能を示さなかったが、BSFを原料とした場合にはカチオン交換性の薄膜が得られた。 2)プラズマ重合装置に四重極質量分析計を直結した装置を用いてプラズマ中の活性種を調べた結果、BSCではスルホニルクロライド基が分解しやすく、一方、BSFではスルホニルフルオライド基がプラズマ中で安定であることが示された。作製した薄膜のESCA,FT-IRによる解析結果からもこの結果が裏付けられた。そのため、BSFを用いた場合にはイオン交換性薄膜が得られたものと考えられる。以上の結果は、プラズマ重合体にイオン交換機を導入するためには、プラズマ中における原料のイオン交換基の安定性が高いモノマーを用いる必要があることを示している。 3)モノマー単独の重合反応について上記と同様の解析を行ったところ、炭化水素系のモノマーとフルオロカーボン系のモノマーでは構造が類似していても、反応性が全く異なることがわかった。また、生成したポリマーの化学構造をC_<13>-NMRを用いて調べた結果、ポリマーは架橋した構造を有していることがわかった。
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